時々パパ日記

共働きで妻と2歳半の長男と3人、日々の出来事や思ったことを書いています。

小説「そして父になる」の感想

少し前に見た映画のノベライズ小説の感想文です。

もともとの映画を見た経緯は、毎週金曜か土曜にやっている長男が寝た後の映画鑑賞の候補として、ちょうどこの小説版を読了したばかりの妻が希望したからという理由だったのですが、僕は映画を見た後で読みました。

映画版の感想は少し前に書いたのでここではふれません。以下小説版の感想です。

まず、普通に小説としてみると、映画のノベライズということで独特な単調さがあります。特に前半部分は著者の意図がつかみきれず、映画の風景を書き写しているだけといった印象が強いです。反面、後半では色々なシーンの細かい行為に、各人物の感情説明が付け加えられていて、それが原作としての脚本の意図と一致しているかはともかくとして小説版の作者の考えが入ってくるシーンが増えるので作品として読めなくない形にまとまっていると思います。

特に小説版の特徴としては、主人公の父親失格エリートサラリーマンパパであるところの良太とそれまで暮らしてきた血の繋がっていなかった子どもの慶太の関係を、良太自身と彼が憎む良太の父との関係に重ねて、憎んでいたはずの父と自分が同じことをやってしまっている、という悩みが少し強調されています。これは映画版でも描かれていましたが、小説版ではオリジナルエピソードとして、良太自身も血の繋がっていない継母と父への反発から家出をし、強制的に連れ戻されて父に折檻されるという話が追加されていて、交換した実の息子の琉晴(りゅうせい)が同じように家出した際に連れ戻しにいくエピソードと重ねて良太の後悔を促す心の傷として扱われています。

つまるところ、良太の父親が酷い人で、良太はそんな父を憎み反面教師として生きてきたはずなのに肝心なところでは同じように振舞ってしまった。という話になりかけますが、良太が後悔して態度を改めることで、あっさりと克服して解決に向かいます。

あっさり解決したあたり、血の束縛という話は映画のテーマとは違うことが明らかなので、僕としては確かに大切なことだとは思うけれど、サイドストーリーとして挿入するにはちょっと重すぎるテーマなのでは?と思ったりしながら読みました。

結局は、都会的で仕事熱心で、子どもの可愛がり方を知らなかったパパが、幼児の取り違えという非日常的な災難を通して親子の絆を確認し、だんだん子どもの気持ちを尊重できるようになっていく。自分の理想を押し付けるだけだった今までの態度を反省して一緒にキャンプに行くことをワクワクできるようなパパになっていく。よかった〜。ということを楽しむための物語のように思います。

憎い父から受け継がれた血の束縛だとか、血の繋がっていない子どもに対する払拭できない違和感の克服といった危険なテーマには深入りしていないのが映画・小説ともに共通するスタンスです。このスタンスのおかげでモチーフの重さに比べて比較的に幸せに楽しめる作品に仕上がっていると思います。